信濃三十三観音札所巡りとは
観音巡礼は西国・坂東・秩父などをはじめとして、全国各地に多くの霊場が存在します。信濃観音霊場はそのひとつであり、およそ江戸時代初期ごろに設定されたと言われております。この信濃観音霊場の最大の特徴は、日本アルプスを臨むその山々に囲まれた大自然にあります。季節の移り変わりとともに山々が様々な表情を見せる一方、観音さまは長い年月変わることなくずっと我々を見守ってくださいます。
また、古来より観音さまは補陀落山という大変高い山にお住まいであると伝えられております。長野県は日本一平均標高の高い県であり、信濃観音霊場はまさに観音さまのお住まいになられる霊場としてもっとも相応しいといえるでしょう。変わりゆく景色、時代の中にあって、変わることなく優しく我々を見守ってくださる観音さまに出会う旅は大いなる慈悲に出会う旅であり、この旅を通じて一人でも多くの人々が心豊かになられることを心より祈念いたします。
観音巡礼とは
「巡礼」とは、宗教における聖地・霊場を参拝することであり「観音巡礼」は観世音菩薩に出合う旅であります。この「観音巡礼」の起源は次のような話があります。養老2年(718年)、大和長谷寺を開山した徳道上人が、病により仮死状態になり、そして冥土の入口で閻魔王に会ったのですが、「おまえが死ぬのはまだ許さない。世の中にはたくさん苦しんでいる人がいるのだから三十三観音霊場を作り、人々を救うため巡礼をすすめなさい。」と告げられます。そして現世に戻された徳道上人は「三十三の宝印」にしたがい、三十三の霊場を設けて庶民に巡礼を説いたと伝えられています。そして約270年後、花山法王によりこの巡礼が世間に広く知れ渡るようになりました。
札所になっているお寺にはそれぞれの縁起や伝承があり、そこには本尊さまにまつわる多くの物語があります。そして札所は二つとないご本尊さまとご縁を結ぶ場所であります。日常の世界から非日常の世界の旅に出て、長い間護持信仰されてきた観音さまに出会うことで、自分自身を見つめ直し、素直な気持ちで祈ることで清らかな心になることでしょう。救い、癒し、自己再生の旅、それが観音巡礼といえるでしょう。